2024/05/27
コラム
今月始め、「気候変動」「森林」「水セキュリティ」の3分野が統合された2024年CDP質問書が公開されました。企業は回答システムがオープンする6/4から回答できるようになります(採点対象の回答期限は9/18)。今回はどのような変更があるのか、またその背景について、注目すべき項目に絞って見ていきます。
詳細について知りたい場合は、個別に勉強会なども開催しておりますので、是非ご相談ください。
全体構造と国際基準との整合性強化のねらい
質問書全体の構造をみますと、すべての環境課題に関わるテーマ横断の質問が納められているモジュールと、個別の環境テーマに特化したモジュールとで構成されています(図表1)。「コーポレート完全版質問書」に回答する企業は、テーマ横断のモジュールのほか、モジュール7の気候変動、モジュール10のプラスチック、モジュール11の生物多様性の質問に回答可能となります(ただし、プラスチック、生物多様性についてはスコアリング対象外)。他方、「森林」「水セキュリティ」に関しては、CDPが定める開示要件に当てはまる場合や、サプライチェーンメンバーから回答要請を受けた場合、また企業自ら回答することを決めた場合などに回答することになります。
(出所)CDP「Corporate Disclosure- Key changes for 2024: Part II」(2024年3月)
質問書の統合により、「ガバナンス」や「事業戦略」などこれまで環境テーマごとに求められた回答の重複が避けられると同時に、企業に複数の環境課題の相互関連性を認識し、総合的に捉えることを促す効果が期待されます。
ここからは話すと長くなってしまいますので、重要な点の項目出しをさせて頂きます。
国際的な開示枠組み(TCFD,IFRS S2,TNFD等)との整合性を強化
バリューチェーン全体かつ複数の環境課題に対する統合的な評価が必要
リスク/機会に対応する適切なガバナンスとプロセスの整備が重要
CDP回答を通じて、バリューチェーン全体かつ様々な時間軸にわたる環境負荷を包括的に評価し、経営層の監督のもと、すべての環境課題への対応を事業戦略や財務計画に反映させるプロセスが確立できているかが問われてきています。つまり、高い評価を得られる企業は、環境リスクや機会による長期的な不確実性や財務インパクトに対処するための備えが出来ており、様々な環境課題に対してレジリエントであることを投資家などにアピールできると考えられます。
2024年CDP質問書は3分野の質問が統合されたものの、質問項目が詳細化されたり、財務情報とのつながりを示すことが求められるなど内容も深化していることから、回答作業が難航するケースもあろうかと思います。
また、今後公開されるスコアリング基準やウェイティング(項目ごとのスコアの重み付け)にも注目してみていきたいと考えています。
冒頭にも申しましたように、質問書に関する勉強会などにも対応しております。回答の仕方で何かお困りの際には、お気軽にご相談ください。
担当は、気候変動戦略研究室 山本でした。
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