English

MIRAIT ONE GROUP

気候変動政策ブログ・環境通信

環境通信 Vol.216 衛星システムの活用よる原産地のリスク管理の事例を紹介

2023/08/25

コラム

衛星システムの活用よる原産地のリスク管理の事例を紹介

世界中で、気候変動対策と、生物多様性保全に向けた機運が高まっています。
これら二つの対策と高い関連性が指摘されているのが「森林」です。

欧米ではすでに、この「森林」を損なうような原材料の調達を、法律で取り締まる動きが加速しています。

特にEUにおいては、森林破壊防止のためのデューデリジェンス義務化に関する規則が、2024年12月から適用されはじめます。

この規則では、森林コモディティと言われる、パーム油、畜牛、木材、コーヒー、カカオ、大豆などの商品をEU市場で販売、提供、または輸出するすべての事業者と取引業者に対して、森林破壊によって開発された農地で生産された商品ではないことの確認や管理が義務づけられています。

このように、自社だけではなく、バリューチェーンを通じたリスクの評価・開示は、来月公開予定のTNFDやCDPフォレストにおいても求められています。

当社は本環境通信を通じてご案内してきましたとおり、TNFDやCDPについてもご支援をしております。

国際航業のTNFD支援についてはこちらから

また、当社では、持続可能な原材料調達にむけて、衛星画像を活用した森林減少・劣化のモニタリングシステムや森林減少ゼロ支援サービスを提供しております。

衛星データによる持続可能なコーヒー栽培についてはこちらから
パーム油生産における森林減少ゼロ支援サービスの実証についてはこちらから

ここでは、コーヒーを対象とした事例を紹介させていただきます。

コーヒー生豆は国際的に取引されている最も高価な農作物の一つであることから、生産に関わるリスクを迅速に把握することが特に重要であり、遠隔地から農園の情報を把握することができる衛星リモートセンシング技術の活用ニーズが高まっています。加えて、コーヒー栽培に必要なシェードツリーの存在により、生物多様性保全や CO2吸収が期待できるなど、コーヒー栽培は気候変動の緩和に貢献できるという側面もあります。
そこで、UCC上島珈琲と国際航業は、気候変動リスクの管理と持続可能な調達の実現を目指して、最先端の宇宙テクノロジーによるコーヒーの木の生育診断指標の開発と気候変動緩和指標の開発を行いました。

衛星データによる持続可能なコーヒー栽培について

今回の実証項目全てにおいて期待する成果を上げることができ、コーヒー栽培における衛星リモートセンシング技術の有効性が明らかになりました。
特に大きな成果として、コーヒーの木の活性度を示す指標(収量・品質・病気等)の特定に成功したことが挙げられます。
また、農園周辺の植生とコーヒーの木とでは、光の反射特性に違いがあることが明確になりました。本実証成果を受けて、衛星画像を活用したコーヒーの木の活性度評価による遠隔地からの農園管理、シェードツリーのモニタリングによる気候変動に対する取り組みを実現できると考えています。

画像解析結果

今後、UCC上島珈琲と国際航業は、現地政府や大規模生産者に対して本実証成果を用いたコンサルティングを提供するビジネスの早期実現に向けて、本実証で開発した指標の精度向上を図る取り組みを共同で行う予定です。

国際航業では、TNFD取組支援やCDPフォレスト回答支援に加え、衛星リモートセンシング技術を活用した評価などにも対応しております。
ご興味がありましたらお気軽にお問合せ下さい。

担当はLBSセンシング事業部森林チームの 前田 佳子 でした。