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気候変動政策ブログ・環境通信

環境通信 Vol.202 カーボンニュートラル経営と節電による事業の安定の両立

2022/06/01

コラム

カーボンニュートラル経営と節電による事業の安定の両立

気候変動戦略研究室 山本 美紀子

今回は、岸田首相が発表した物価高対策の一つである、「節電ポイント」付与制度を基点にして、カーボンニュートラル経営と事業の安定を考えてみます。

この制度が打ち出された背景としては、2022年5月27日に経済産業省資源エネルギー庁から公表された2022年度の電力需給見通しがあります。
※詳細はこちらからご確認下さい
政府は東日本大震災以降、電力の供給に万全を期すため、毎年、全国の電力需要が高まる夏季 (7月~9月)と冬季(12月~3月)の前に電力需給の検証を実施しています。

今年の夏季の電力需給は、10年に一度の猛暑を想定した需要に対し、安定供給に最低限必要な予備率3%を上回っているものの、7月の東北・東京・中部エリアで最大需要発生時の予備率が3.1%と 2017年度以降で最も厳しい見通しとなっています。

こうした中、政府は電力需給のひっ迫に備え、家庭や企業に省エネ・節電の取組を呼びかけるなど、全国に10ある電力管内すべてに対して節電要請を行います。
節電要請を行うのは2015年度以来、7年ぶりとなります。

電力会社の要請に応じて電力消費を減らし、対価を受け取るサービスはデマンドレスポンス(DR)と呼ばれ、企業を対象に先行実施されています。
今年3月、東北地方の地震により首都圏に電力を送る火力発電所の設備が壊れて東電管内で電力需給がひっ迫した際、鉄鋼や化学メーカーなどで電力消費量の抑制が行われました。
こうした企業向けDRを後押しするためのポイント付与や割引制度への支援策を政府は検討しています。

今後、企業にとっては、事業活動や製造現場等のオペレーションの工夫や、エネルギー消費効率の高い設備や機器への更新を進めることの重要性が益々高まってきます。
これは、電力需給の改善に寄与するのみならず、企業業績にとっても電力経費の削減につながるものです。

前述の2022年度の電力需給見通しでは、冬季はさらに厳しい見通しが予想されています。
今後のロシア・欧州を中心にした地政学リスクの動向次第では、エネルギーを取り巻く情勢は一変し、世界で燃料の安定調達リスクが益々高まることが懸念されます。
こうした中、わが国のエネルギーの安定供給も予断を許さない状況にあり、企業は、長期視点ではカーボンニュートラルを目指しながら、安定した事業基盤の確保に向けて、一層の節電への取組が求められています。

ご質問やご要望がございましたら、是非とも各営業担当者または技術担当者までお気軽にご相談を頂ければと思います。

担当は、気候変動戦略研究室 山本 美紀子でした。