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エネがえる総合ブログ

上下水道局のGX推進における費用対効果分析手法 ~投資判断を支える経済効果シミュレーションの活用法~

2026/02/16

コラム

自治体経営において、今や避けて通れない課題となったGX(グリーントランスフォーメーション)。その最前線に立たされているのが上下水道局です。

上下水道事業は、24時間365日の安定稼働を維持するために膨大な電力を消費します。その消費量は日本全体の電力消費量の約1.5%を占め、地方自治体においては、事務事業全体の温室効果ガス(GHG)排出量の2割から、多いところでは5割近くを上下水道事業が占めるケースも珍しくありません。

脱炭素社会の実現に向け、政府や日本下水道協会からも強力な推進が求められる中、現場の担当者が直面している最大の壁は「環境への貢献」という理想ではありません。それは、「具体的にいくら投資して、いつ回収できるのか?」という費用対効果の不透明さです。

公営企業として効率的な経営が求められる以上、根拠のない投資は許されません。本記事では、上下水道局がGXを推進するための具体的な費用対効果分析の手法と、専門人材不足を解消しながら精度の高い投資判断を実現する「BPO(業務プロセスアウトソーシング)」の活用法について解説します。

第1章:上下水道事業がGXを推進すべき理由と政策動向

なぜ今、上下水道事業にこれほどまでのGXが求められているのでしょうか。そこには、エネルギー消費の実態と、加速する政府の政策動向が背景にあります。

1-1. 上下水道事業のエネルギー消費実態

上下水道事業は、国内で最もエネルギー集約的な公共インフラの一つです。

・膨大な電力消費: 年間電力消費量は約150億kWhに達し、国内総電力の約1.5%を占めます。
・排出量の比率: 温対法に基づく地方公共団体実行計画において、多くの自治体で排出源の筆頭に挙げられます。政令市では2割以上、地方都市では5割を占める事例もあり、**「上下水道の脱炭素なくして自治体のカーボンニュートラルなし」**と言っても過言ではありません。
・構造的課題: ポンプによる送水や水処理施設での送風機(ブロワ)など、プロセスの性質上、電力消費をゼロにすることは不可能です。省エネ努力は続けられていますが、抜本的な削減には「創エネ(再エネ導入)」が不可欠です。

1-2. 政府目標とGX推進の要請

政府の「地球温暖化対策計画(令和3年10月)」では、上下水道における省エネ・再エネ導入の促進が明記されました。

・下水道分野: 2030年度までに2013年度比で208万t-CO2の削減。
・水道分野: 同期間で21.6万t-CO2の削減。
・財政支援の拡充: 令和5年の「GX実現に向けた基本方針」により、公営企業に対しても「脱炭素化推進事業債」などの地方財政措置が拡充されています。

1-3. 上下水道施設の高い再エネポテンシャル

一方で、上下水道施設は再エネ導入に極めて適した特性を持っています。

1.広大な敷地と屋根: 浄水場や下水処理場は、太陽光パネルを設置するための広大なスペース(沈殿池の上部空間など)を有しています。

2.高い自家消費率: 24時間稼働の施設は常に一定以上の電力需要(ベースロード)があるため、発電した電力を無駄なく施設内で消費(自家消費)でき、経済性が高まります。

3.PPAモデルの適用: 敷地を提供し、発電した電力を購入する「PPA(電力販売契約)」モデルにより、初期費用ゼロでの導入も現実的な選択肢となっています。

第2章:GX投資の壁となる「費用対効果が見えない」問題

推進の必要性もポテンシャルも理解している。それでも、多くの自治体で検討が足踏みしてしまうのは、公営企業特有の「投資判断の難しさ」にあります。

2-1. 課題①:投資判断の根拠データがない

太陽光発電や蓄電池を導入する際、「どれだけ電気代が下がるのか」をシミュレーションするには、単なる年間発電量だけでなく、「施設の電力使用パターン」と「発電パターン」の30分ごとのマッチングが必要です。この精緻なデータがない限り、公営企業会計で求められる投資回収期間やライフサイクルコストを算出できず、予算要求の段階で挫折してしまいます。

2-2. 課題②:導入方式の比較検討ができない

現在、再エネ導入には「自己所有」「PPA」「リース」の3つの主要な選択肢があります。

・自己所有: 投資額は大きいが、長期的な削減効果は最大。
・PPA: 初期投資はゼロだが、20年程度の長期契約となり、単価が市場価格に左右されるリスクがある。
上下水道施設は負荷率が高いため、実はPPAよりも自己所有の方が有利になるケースも多いのですが、その比較検証を行うための材料が不足しています。

2-3. 課題③:専門人材・専門知識の不足

上下水道局の職員は水処理や土木のプロフェッショナルですが、再エネ設備、系統連系、電力市場、補助金制度の専門家ではありません。
日本下水道協会も指摘している通り、専門知識を要する脱炭素検討を独力で行うのは非常に負荷が高く、外部コンサルに依頼すれば数百万円のコストと数ヶ月の期間がかかってしまいます。

2-4. 課題④:議会・首長への説明が困難

「環境にいいから」という理由だけでは議会の承認は得られません。「市民の負担となる水道料金にどう影響するのか」「20年間のトータルコストでプラスになるのか」といった問いに、客観的な数値で回答する必要があります。

第3章:費用対効果分析の基本フレームワーク

精度の高い投資判断を行うためには、以下の要素を網羅したシミュレーションが不可欠です。

3-1. 経済効果シミュレーションの主要5指標

1.電気料金削減額: 自家消費によって電力会社から買う電力量をどれだけ減らせるか。
2.デマンド削減効果: 蓄電池を併用し、ピーク時の電力を抑えることで基本料金をどれだけ下げられるか。
3.CO2削減量: 自治体全体の目標達成に向けた寄与度。
4.投資回収期間: 自己所有の場合、何年で投資額をペイできるか。
5.ライフサイクルコスト(LCC): 20年〜25年の運用期間における、メンテナンス費用を含めた総コスト。

3-2. 上下水道施設特有の試算ポイント

上下水道施設には、一般的な商業ビルや工場とは異なる特性があります。

24時間稼働の高負荷率: 夜間も電力を消費するため、太陽光発電の自家消費率は100%に近くなることが多いです。これは経済性を高める大きな要因です。
季節変動の考慮: 水需要は季節や天候に左右されます。これと太陽光の発電変動を掛け合わせたシミュレーションが重要です。
既存の非常用発電機との兼ね合い: 蓄電池を導入する場合、BCP(事業継続計画)の観点から既存設備との役割分担を整理する必要があります。

3-3. 導入方式別の比較イメージ

導入方式初期費用メンテナンス費所有権特徴
自己所有高(補助金活用可)自治体負担自治体削減効果が最も高い。財政措置(事業債)が使いやすい。
PPAゼロ事業者負担事業者資産を持たずに導入可能。ただし、長期的な支払総額は高くなる傾向。
リース低〜中契約によるリース会社予算の平準化が可能。

3-4. 先進事例:新見市と兵庫県の取り組み

・岡山県新見市: 上下水道施設にPPA方式で太陽光発電と蓄電池をセットで導入。24時間の電力需要に対し、昼間の余剰電力を蓄電池に貯め、夜間に放電することで、再エネ利用率を最大化しています。

・兵庫県: 3箇所の下水処理場に太陽光発電を導入。年間約124万kWhの発電により、年間約700tのCO2削減を達成。夏季のピーク電力を5〜10%カットするなど、目に見える効果を上げています。

第4章:「エネがえるBPO」で経済効果シミュレーションを外部委託する

「専門知識がない」「時間がない」「予算もない」という三重苦を解決するのが、国際航業が提供する「エネがえるBPO/BPaaS」です。

4-1. 専門業務を外部委託する(BPO)という選択

これまでは、経済効果の試算や基本設計は、高額なコンサルティング契約を結ぶか、メーカーの言いなりの数字を信じるしかありませんでした。しかし、公営企業の効率的運営が求められる今、必要な時に、必要な分だけ、第三者的な視点で専門業務を委託するBPO(Business Process Outsourcing)が注目されています。

4-2. エネがえるBPO/BPaaSでできること

本サービスは、国際航業とエコリンクスが提携し、国内トップクラスのシェアを誇るシミュレーションツール「エネがえる」を駆使して、実務を代行するサービスです。

① 経済効果シミュレーション・診断レポート作成
施設の1年間の電力データ(30分値データ等)を提出いただくだけで、専門チームが詳細な診断レポートを作成します。

・高精度な試算: 全国3,000種類以上の電力料金プランに対応。
・多様な比較: 自己所有 vs PPAの比較や、蓄電池の有無による効果の違いを可視化。
・低コスト・短納期: 1件10,000円〜という圧倒的な低コストで、最短即日の納品が可能です。

② 設計支援・レイアウト作図代行
浄水場の屋根や敷地の図面から、太陽光パネルが何枚設置できるか、最適な配置図(レイアウト図)を作成します。沈殿池の上部など、特殊な設置環境にも対応可能です。

③ 補助金・系統連系申請代行
再エネ導入には「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」など複雑な補助金申請がつきものです。これらの煩雑な書類作成や、電力会社への系統連系申請、経産省への事業計画認定申請を専門チームが代行します。

④ 職員向け教育研修
「そもそもPPAと自己所有は何が違うのか?」といった基礎知識から、GX推進に向けた庁内啓発研修まで、職員のレベルアップを支援します。

4-3. なぜ「エネがえる」なのか

国際航業の「エネがえる」は、国内700社以上が導入し、年間15万件以上のシミュレーション実績を持つ、業界標準のツールです。

・客観性の担保: 特定のメーカーに偏らない中立的なデータに基づいています。
・公共施設の実績: 既に多くの下水処理場や公共施設でのシミュレーションに活用されており、議会説明資料としての信頼性も抜群です。

4-4. 上下水道局での具体的な活用シーン

・中長期経営戦略の策定: 10年、20年スパンでの経営計画に、現実的な光熱費削減予測を組み込めます。
・PPA事業者の公募前: 「どの程度の単価なら妥当か」を事前に把握するためのリファレンスとして活用。
・予算要求・議会対応: グラフや図解を多用したプロ品質のレポートにより、説得力を飛躍的に向上させます。

第5章:まとめ ~費用対効果の「見える化」がGX推進の第一歩~

上下水道事業におけるGXは、もはや単なる環境対策ではなく、将来の電気料金高騰リスクに備え、公営企業の経営基盤を安定させるための**「経営戦略」**そのものです。

本記事のポイントを整理します。

1.上下水道はGXの主役: 膨大な電力消費を抱えるからこそ、再エネ導入によるインパクトは極めて大きい。
2.シミュレーションが投資の鍵: 24時間稼働の特性を活かし、自己所有やPPAの費用対効果を客観的な数値で比較することが不可欠。
3.BPOでリソース不足を解消: 専門的な試算や申請業務は「エネがえるBPO」に委託することで、低コストかつスピーディーにプロジェクトを推進できる。

「何から手をつければいいかわからない」という担当者の方は、まずは主要な1施設を選び、経済効果シミュレーションを依頼することから始めてみてはいかがでしょうか。数値が見えることで、停滞していたプロジェクトが確実に動き出します。

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