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MIRAIT ONE GROUP

2025/04/25

お知らせ

SAR衛星による2025年ミャンマー地震の被害状況推定結果について ~サガイン断層沿いに広範な建造物被害の可能性~

 

2025年4月25日

2025年3月28日午後0時50分ごろ、ミャンマーでマグニチュード7.7(USGS発表)の大規模な地震が発生しました。本地震に対し、国際航業では欧州宇宙機関(ESA)が運用する合成開口レーダ(SAR)衛星「Sentinel-1」の観測データを用いて、被害状況の推定解析を実施しました。
本解析では、地震前後のSAR画像を比較し、建物や地表の状態に変化が生じたと考えられる範囲を抽出しました。現地からの詳細な被害報告が限られる中、SARデータによるリモートセンシングは、広域の被害把握や支援判断の参考情報として有効です。

今回の災害で被災された方々にお見舞い申し上げるとともに、弊社の所有する技術が、被災状況の把握ならびに今後の復旧に少しでもお役に立てれば幸いです。

使用データと解析手法

使用衛星:Sentinel-1(欧州宇宙機関)
観測日
 地震前:2025年3月1日、3月25日
 地震後:2025年4月6日
観測範囲

ミャンマー地震の解析範囲位置図

解析範囲位置図
地図背景:国土地理院「地理院地図」より作成(地図データ © 国土地理院)

解析方法
・地震前後の干渉SAR画像を作成し、「干渉性(コヒーレンス)」※1の変化を分析
・干渉性の急激な低下を示す範囲を、建物被害や地盤の変化が生じた可能性のあるエリアとして抽出
・被害の可能性を相対的に評価する指標「NBDI(Normalized Building Damage Index)」を用いて色分け表示

※1:干渉性(コヒーレンス)とは
SAR衛星で同じ地点を2回撮影した際の「位相や強度の一致度合い」を表す指標です。地表に変化がなければ高くなり、建物の倒壊や地盤の変化があると低くなります。干渉性が大きく低下している範囲は、被害の可能性が高いと考えられます。

主な解析結果と考察

サガイン断層沿いに沿って広範な被害の兆候
・SAR画像からは、地震に伴う地表のズレ(=地面が横にずれたり、持ち上がったり、沈んだりする変形)が南北300km以上にわたり発生していたと推定されます。
・特に「地表が大きくずれた可能性があるライン(=位相の切れ目)」や「建物や地面の状態が変化したことで、衛星のレーダ画像の一致度が低い範囲(=コヒーレンス低下帯)」が複数確認されました。
・これは、メインの断層に沿って、複数の断層が地表に出現した可能性を示唆しています。

地表面の変動を示すSAR干渉画像

地表面の変動を示すSAR干渉画像
 

(ミャンマー地震)SAR画像の位相のずれや干渉性の低下から推定した地表面のずれの分布

SAR画像の位相のずれや干渉性の低下から推定した地表面のずれの分布

■サガイン市街地での被害集中
・サガインの町では、断層に沿って明確に被害が集中している傾向が見られました。SAR画像上でも、建物被害の可能性が高い範囲が帯状に分布しています。

■マンダレー市内での被害の偏り
・マンダレー市内でも、市街地の中で断層に近い西側や川沿いの低地エリアでは建物の被害可能性が高い範囲が広がっている一方で、高台や断層から離れた地域では被害の兆候が少ないことが分かりました。
・このような被害のばらつきは、地盤の性質や地震波の増幅特性などの違いに起因していると考えられます。

ミャンマー地震のマンダレー周辺の建物被害状況推定図

マンダレー周辺の建物被害状況推定図

ミャンマー地震のマンダレー市街の被害の大きい領域

マンダレー市街の被害の大きい領域

被害状況推定図と評価指標

被害の可能性を色の濃淡で表現した「被害状況推定図」では、NBDI(Normalized Building Damage Index)という独自指標を用いて、建物の損傷可能性を0~1の数値で相対的に評価しています。

■NBDIとは?
地震前後のSARデータを比較し、建物や地表の変化の度合いを0〜1の値で表現した指標です。
値が1に近いほど、建物被害が発生している可能性が高いと考えられます。
・灰色(0.0~0.2):被害の可能性が相対的に非常に低い
・黄色(0.2~0.4):被害の可能性が相対的に低い
・橙色(0.4~0.6):被害の可能性が相対的に中程度
・赤色(0.6~1.0):被害の可能性が相対的に高い

今後の活動と展望

本解析結果は、現地での被害状況の把握や、支援対象地域の優先順位づけ、将来的な復旧・復興計画の立案などに活用されることが期待されます。
国際航業では、これまでも能登半島地震、ニーラゴンゴ火山噴火(コンゴ民主共和国)などの大規模災害において、SAR衛星を活用した被害モニタリングを実施しており、空間情報技術と専門的なコンサルティングを融合させた「マルチ・モニタリングサービス」を通じて、防災・減災に貢献しています。

本件に関する商品

マルチ・モニタリングサービス

本件に関するお問い合わせ先

国際航業株式会社 コーポレート統括本部 組織運営企画部 広報グループ
E-mail:info-kkc@kk-grp.jp