2022年2月
CDP水セキュリティ概要版レポートと2022質問書の変更点
防災環境事業部フロント営業部 黒田 康平
ご存知の方も多くいらっしゃるかと思いますが、
国際航業(株)はCDP水セキュリティ2021のスコアリングパートナーです。
水セキュリティ2021質問書に対する皆様の回答の一部をスコアリングさせて頂きました。
そして先月、当社もサポートしたCDP2021の報告書概要版が公開されました。
水セキュリティの概要版報告書はこちら
また、CDP2022の質問書についても情報が公表されましたので、それぞれの内容について紹介させて頂きます。
気候変動分野の質問書配布対象企業拡大へ
◆CDP水セキュリティ2021概要版において、以下が報告されています。
- 3,370社:グローバルで水セキュリティ質問書に回答した企業数2020の2,930社から大幅に増えています。
- 62%:日本で質問書を送付された361社のうち、223社が回答
- 37社:Aリストに選定された117社のうち、日本企業の数(国別で最多)
- 76%:事業に影響を与えうる水関連リスクが特定された企業の割合
- 81%:水に関する定量的・定性的な目標の両方を設定している企業の割合
現時点では、企業による水リスク評価の方法や、特定されたリスクに対する対応方法などについて明確に定められたガイドライン等はありませんが、気候変動による降水の変化や水害等の水関連リスクが現実に起きる中、事業継続に対する投資家の要請も強まっており、日本企業も水リスクの把握・対応をスピーディに進めつつあると言えます。
また、水リスクは自社のみではなくサプライチェーンにおける対応も重要であることから、現時点では質問書配布対象ではない企業でも、顧客からの対応要請が今後ますます拡大・強化されてくるものと考えられます。
水リスク・CDP水セキュリティの対応について、お悩みがある方は是非ご相談下さい。
◆CDP2022質問書に関する情報が公表されました。
今年も、来月には開示要請に関するレターが送付され、4~7月の期間で回答が求められる見込みとなっており、2021からの変更点等が公開され始めています。
大きな点として、以下の2点を挙げます。
- 気候変動分野の対象企業が、これまでの500社から、東証プライム市場上場企業全社(1,841社)に拡大されます。
- 2022の気候変動質問書に「生物多様性」に関する設問が加わり、さらに2023年からは「土地利用」「海洋」「食料」「廃棄物」などのテーマが加わった上で質問書が1つに統合されます。
気候変動についてはグローバルで13,000社以上が質問書に回答しており、日本においても対象企業を大幅に増やし、気候変動分野での取組拡大・推進を狙っているようです。
また、現在枠組みや目標設定手法が検討されている「TNFD(自然関連情報開示タスクフォース)」や「SBT for Nature」に沿った形での質問書統合が検討されています。
気候変動は、各テーマと相互に連携しているため、CDPにおいてもテーマごとの質問書ではなく統合的な質問書とし、企業においても関連する複数テーマを同時に検討・解決することで、取組の効果を上げたい狙いがあるようです。
今後はこれまで以上に、気候変動の緩和策だけではなく、関連するテーマも含めた評価・対応(適応策)が重要度を増す事となりそうです。
担当は、防災環境事業部フロント営業部 黒田でした。
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2022年1月
火山灰は産業廃棄物?火山災害を環境の観点でとらえる(『防災✕環境』シリーズ①)
防災環境事業部 防災ソリューション部 大津 拓也
1.火山噴火と火山災害
2022年1月15日に発生した南太平洋のトンガ近海の海底火山(Hunga Tonga-Hunga Haʻapai)の噴火では”未知の現象”である潮位変化が観測され、日本でも「津波警報」の仕組みによって警報が発表されました。自然現象の大きさに畏敬の念を抱くとともに、火山防災の必要性を感じる事象であると感じます。
日本は、トンガと同様に変動帯(プレート運動による地殻変動・火山活動が活発なエリア)に位置しており、地球上の1割の火山が集中している火山列島です。
近年でも、御嶽山(2014年)、箱根山(2015年)、阿蘇山(2021年)などで噴火が発生しています。特に2014年の御嶽山噴火では、“突然の噴火”により登山客に被害が出てしまうなど、噴火の予測は依然として難しいものとなっています。
そのような状況のなかでも、2021年3月には富士山ハザードマップの改定が行われました。
民間企業のお客様から国際航業への問い合わせも、富士山のハザードマップ改定後から徐々に増えてきています。水害や地震に比べて対策の優先度が低くなりがちな火山災害については、企業担当者もわからない点が多いのではないでしょうか。
2.火山灰の取り扱い
火山の噴火に伴う被害の一つに「降灰」があります。富士山の噴火では東京都心エリアでも2~10cmの降灰が想定されています(参考:降灰の可能性マップ)。
噴火現象のうち最も遠くまで影響を与える火山灰は「停電」「交通の麻痺」「水質汚染」など生活・業務に深刻なダメージを与える可能性があります。

図 降灰の可能性マップ
出典)静岡県ホームページ,富士山ハザードマップ(改定版)検討委員会報告書(令和3年3月富士山火山防災対策協議会,より引用(https://www.pref.shizuoka.jp/bousai/documents/05-7_syou05-7.pdf)
降り積もった火山灰は除去する必要がありますが、民間事業者はどのように処理すればよいのでしょうか。
環境管理の観点から火山灰を捉えると、以下のように説明がなされています。
◆法令上の火山灰の取り扱い
・「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」では「廃棄物」に該当しない
火山灰は産業活動によって排出されるものではないため、「産業廃棄物」には該当せず、「一般廃棄物」として処理することになりそうです。
これは、各市町村が処分する責任を負うことを指します。しかし、市町村としては、通常の廃棄物の性質・量ではないため「災害廃棄物」として処分することになるでしょう。
よって最終的には、市町村の判断・指示を待つことになるものと推察されます。
BCP(事業継続計画)の観点からは、「降灰→事業所からの排出」までのあいだ、除去した火山灰を一時保管しておくことを考慮した計画が求められます。
その際には以下の点に注意して保管場所を選定するとよいでしょう。
- 平坦な場所
- 水路・排水口などから離れた場所
- トラックでの進入が可能な場所
- 飛散防止策(シート)などを設置できる場所
3.火山防災の取り組みにむけて
火山災害は多くの自治体・企業が経験したことの無い事象で、噴火により想定外の事象が多く発生することが予想されます。平時でも準備できるものは、予めBCPに組み込み、噴火時にできるだけ余裕をもった行動ができるよう心がけると良いのではないでしょうか。
最後に、2022年1月27日に、企業の火山防災に必要な情報を整理するウェビナーを開催します。火山ハザードマップの記載内容や、火山噴火に関する警報などの情報を今一度確認したい、という方は是非ご参加ください。
担当は、防災環境事業部 防災ソリューション部 大津拓也でした。
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