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地下水シミュレーション ブログ

地下水マネジメント 第2回「地下水シミュレーション技術の事例紹介」

2024/03/15

コラム

今回は、国際航業が長年わたって培ってきた地下水シミュレーション技術を活用した事例を紹介します。

地番沈下の予測

地盤沈下~古くて新しい問題

最初は地盤沈下予測の事例です。地盤沈下は過剰に地下水を取水した結果、地層が収縮する現象です。下の図は有明海を囲む広大な平野筑後平野と佐賀平野の累積沈下量を示しています。潤沢な地下水を含む平野が広がっている地域ですが、農業用の地下水を汲むことで沈下が発生してしまった事例です。赤い部分が地盤が深く沈んだ箇所を示しています。写真のとおり、この辺りの倉庫を見ますと、2020年頃ですが、倉庫の周囲の地面が下がって基礎部分が露出しています。一度、地面が沈んでしまうと元に戻りませんので、事前に地盤沈下リスクを予測する必要があります。

地盤沈下予測シミュレーション

地下水取水に伴う地盤沈下量の推計には水準測量のデータや地層収縮量等の多くのデータを過去に遡って収集する必要がありますが、実際はこれらのデータの取得が難しいのが現状です。そこで衛星データを使って地下水位を推計し、地下水位から地盤沈下量を推計する方法があります。衛星データを活用すれば、どれだけ地下水を取水したら沈下するかを予測することが可能になります。

地下水かん養量の推定

次は地下水の涵養量の推定の事例です。図は熊本地域の1970年代から2016年までの土地の利用の状況の変化を示しています。水田や森林等のかん養域を表す緑部分が減少し、赤色の建物等の都市化部分が拡がっていることがわかります。都市化が進むと地下に染み込む水が減少しますので、地下水のかん養量も減少します。そこで熊本市は地域の地下水を保全するため目標かん養量を設定して将来にわたって地下水を保全する取り組みを進めています。
国際航業はリモートセンシング技術を使って実際の現場のデータがなくても将来の地下水量を推計する技術を持っています。土地利用変化等の条件をインプットして推計した地下水かんよう量の将来予測を地下水保全の施策検討に利用します。

地下水利用可能量の推定 

今度は、実際に利用できる地下水量を推定する事例です。地下水の水収支に応じた地下水の利用可能量を求めます。水系全体のモデルを作って地下水の入りと出、揚水とかん養量を集計して地域ごとの地下水の利用可能量を算出しました。図は静岡県の東部の富士山の周辺のシュミレーションモデルです。一般的に山帯は潤沢な地下水がありますので、富士山周辺部は地下水が豊富です。他の地域の赤く表示された箇所はそれほど余裕がないことを示しています。地域ごとに利用可能量に差異があることがわかります。このようにエリアを区切って地域の地下水利用可能量を計算することができます。

地下水の可視化

共通認識の形成を目的とした3Dシミュレーション

4番目は地下水シミュレーションの可視化の事例です。地下水に関する共通認識の形成を目的としてデジタル技術の活用例を紹介します。
地下水のシミュレーション技術と空間情報を組み合わせることで地下水の流動を可視化する「触れる地下水3Dモデル」を開発しました。地表から入った水の流れを線で表現して、流速をアニメーションで再現します。視点を自由に動かせるので、自由視点で流れを認識できるインタラクティブな体験ができます。この可視化技術では、流れてくる水を遡って、どこから水が来たか水資源の起源を推定することができます。市民への普及啓発、理解促進に努めてくことができると考えています。
リンク先で、実際にモデルを動かすことができます。

触れる地下水3Dモデル

地下水シミュレーションの実例

実際に地下水の起源と流動経路の推定した東京都昭島市の事例を紹介します。下の図は、秩父山地と隣接する平野部の地形モデルで、赤線で囲った地域が昭島市です。多摩川が昭島市を跨ぐように流れています。深層地下水がどこから流れて来るのかを調べるためにモデルを作成して可視化しました。流線が秩父山地から昭島市に入っていくことが表現されています。このように市内への地下水の流動経路や地下水の起源を推定することができます。

ここまで紹介した当社のソリューションを活用して地下水マネジメントの取り組みを支援して、水資源問題を解決できないかと考えています。

地下水シミュレーション
世界中で干ばつが発生しています。
地下水は水循環の一つですが、上手に使うことで、水質が良好で水量を確保できる水資源になります。