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2024-11-28
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王子グループ子会社CENIBRA社の社有林25.4万haを対象とした森林変化の衛星データ分析を実施 ~持続可能な森林管理の取り組みを支援~
2024-10-29
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2024/03/11
コラム
地下水を水資源として継続して利用するためには持続可能な地下水の保全と利用のバランスが不可欠です。地下水の利用や保全について地域の実情を踏まえて合意形成を図る取り組みが地下水マネジメントです。近年、地方公共団体などの地域の関係者が主体となって、地下水マネジメントの取り組みが進められています。
今回は地下水マネジメントについて3回に分けて解説します。
第1回は、なぜ今、地下水マネジメントが必要とされるかについて説明します。
上の図は2022年の世界の主な異常気象と気象災害の発生箇所を示しています。世界各地で異常気象や気象災害が発生しています。台風や多雨といった大雨だけでなく、少雨も問題になっています。下の図は2022年の降水量の分布です。大きな緑丸は平年より20パーセント以上降水量が多かった地域、大きな白丸は30パーセント以上少ない地域を示しています。地域ごとに分布が偏っていますが、世界の多くの地域で降水量が極端に多い、少ないといった現象が発生しています。
2つ目の大きな背景として人口増加のよる水需要の増加です。日本は少子高齢化が進んでいますが、世界的に人口増加が続く傾向にあります。国連が発表する世界人口推計では、2022年頃の世界人口は約80億で、2050年には100億人近くになると予測しています。
人口が増加すれば、必然的に水需要も増加します。図3のグラフはOECDの水需要の推計でます。2050年には、生活用、畜産、製造、発電とほぼ全ての用途で水需要が増えていくと予測されています。この水需要に対してどのように水資源を確保していくかということが大きな課題です。
地球規模の気候変動や水需要の急増を考えれば、水資源の確保が急務になってくることが理解できると思います。地球上で利用可能な水資源の大半は地下水です。地球上の水の約98パーセントは海水で、淡水は残りの約2.5パーセントです。淡水のうち氷河等を除く利用可能な水資源の大半は地下水です。
地下水は「水循環系の中で循環し流動する地下水」と「貯留し資源として有用な地下水」という二つの側面があります。前者を「貯留性」、後者を「循環性」といいます。地表面で水が豊富で循環しているからといって、際限なく取ってしまえば長期的には水資源が枯渇してしまいます。水の循環性だけでなく、貯留性にも着目し、水需要と資源確保のバランスを考えていくにあたり地下水マネジメントが必要とされる背景があります。
こういった 背景を踏まえまして近年水資源に関わるいろいろなトレンドがあります。
昨今は企業の生産拠点が国内に回帰する動きが見られます。2021年に台湾大手の半導体企業が熊本に工場を建設することを公表しました。今後、熊本県へ半導体関連企業の集積が進むと工業用水をどのように確保するか課題になります。これに呼応するかたちで、熊本県は企業と事業に必要な取水量の100パーセント以上の地下水かん養に取り組む協定を結びました。今後増加が予想される水需要と地域の水資源保全とのバランスを図っていく取り組みがみられています。
自治体が水資源に取り組み背景に2021年の水循環基本法の改正が関係しています。この改正で「地下水の適正な保全及び利用」に関する施策が新たに追加されました。翌年には水循環基本計画が改定され、地下水マネジメントを推進するための新たな取り組みが明記されるようになりました。地方公共団体を中心に地下水マネジメントへの取り組みが広がっていく可能性があります。
次回は、地下水マネジメントをどのように取り組んでいくべきか具体例を交えながら紹介します。
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