2024/01
令和6年1月1日16時10分に石川県能登地方で発生した能登半島地震により、石川県志賀町(しかまち)で震度7を観測したほか、北海道から九州地方にかけて広域に震度6強~1を観測しました。弊社では、1月2日午前から、被災状況を把握するために、石川県輪島市(輪島港)、珠洲市(飯田港)、七尾市(七尾港)のほか石川県各地で航空機による緊急撮影を行いました。
随時、こちらのページで、情報を追加・更新してまいります。
このたびの災害で被災された方々にお見舞い申し上げるとともに、弊社の所有する技術が被災状況の把握ならびに今後の復旧に少しでもお役に立てれば幸いです。
【更新履歴】
2月2日:航空レーザ計測成果を用いた数値地形解析結果【速報】(能登地域:西部)を掲載しました。
1月26日:航空レーザ計測成果を用いた数値地形解析結果【速報】(能登地域:北東部)を掲載しました。
1月23日:輪島市と珠洲市を結ぶ国道249号線沿線70km,180km2の航空レーザ計測を実施しました(1/11、1/14、1/17計測)。
1月9日:SAR衛星による被害状況推定図「新潟市」にSNSで液状化被害が投稿されている地点(2024/1/5取得)を重ね合わせ、差し替えました。
1月8日:SAR衛星による被害状況推定図「能登地域」および「新潟市」を掲載しました。
1月3日:航空写真(1月2日撮影)の判読結果を掲載しました。
1月2日:石川県の斜め撮影写真を掲載しました。(2024年1月2日撮影)
珠洲市大谷町から輪島市門前町に至る範囲(図1)において、地震前後の詳細地形データを用いた数値地形画像解析(特許第4545219号)を行いました。その結果、局所的な地表面の変位と広域的な地殻変動による地表面の変位が抽出されました。おおむね西向き傾向の水平変位が確認され、隆起は能登半島北東部及び西部で大きくなっており、既存の調査と同様の傾向が認められました(図2)。
調査範囲北東部、輪島市町野町付近の山地斜面では、約1500×1000mにわたる地表面変位が認められました(図3)。地表面変位は複数のブロックにわかれており、地殻変動による変位量を補正して算出した斜面変動の最大変位量は約8mの大規模な変位が発生しています。
国土地理院の調査で線状の変状が認められた珠洲市若山地区では航空レーザ計測の結果からも段差が確認できます(図4)。
<使用データ>
・地震後:2024/1/11自社計測
・地震前:2022/8~10 石川県計測「令和4年度 森林情報整備業務」成果,
2020/9~10 石川県計測「令和2年度 森林情報整備業務」成果(共に国土地理院より提供)※
※国土地理院との解析協力により、地震前のデータを提供いただきました。
※地震後計測データには積雪も含まれていましたが解析では考慮していません。
※変位量は地殻変動の影響を考慮していますが誤差等を含みます。
※解析結果は、国際航業と国土地理院の共同著作物です。
右のアニメーションは、解析結果⇒地震前⇒地震後の順に表示されます。
※以下の用語については、当社が運営する地理空間情報技術ミュージアムMoGISTをご参照ください。
レーザ測量について、数値地形解析について
珠洲市飯田町から大谷町に至る範囲(図1)において、地震前後の詳細地形データを用いた数値地形画像解析(特許第4545219号)を行いました。その結果、地下の震源断層のずれを反映すると考えられる広域的な地殻変動による地表面の変位と、表層の地盤が斜面の下方に移動したと考えられる局所的な地表面の変位が抽出されました。広域的な変位量は、電子基準点「珠洲」近傍では地震後の電子基準点の観測値とほぼ一致しており、おおむね西向き傾向の水平変位および隆起が能登半島北部でより大きくなる傾向が認められました(図2)。
表層地盤の局所的な変位の発生個所は、既存の調査で地すべり地形が認定される個所とおおむね一致しています。調査範囲北部の河川沿いの山地斜面では、幅約800m、長さ約500mにわたる斜面全体に河道に向かう変位が認められました(図3)。地殻変動による変位量を補正して算出した斜面変動の最大変位量は約5mで、対岸の斜面にも同様に河道に向かう大規模な変位が発生しています。このような変位が確認できた斜面の中には、表層部の地盤の破壊や土砂流出が視覚的には顕著でないために、空中写真や光学衛星画像の判読では変状の抽出が困難なものがあります。
<使用データ>
・地震後:2024/1/11自社計測
・地震前:2022/8~10 石川県計測「令和4年度 森林情報整備業務」成果(国土地理院より提供)※
※国土地理院との解析協力により、地震前のデータを提供いただきました。
※地震後計測データには積雪も含まれていましたが解析では考慮していません。
(計測日の気象庁観測点 珠洲、輪島、穴水の積雪深は0cm)
※変位量は地殻変動の影響を考慮していますが誤差等を含みます。
※解析結果は、国際航業と国土地理院の共同著作物です。
右のアニメーションは、解析結果→地震前→地震後の順に表示されます。
※以下の用語については、当社が運営する地理空間情報技術ミュージアムMoGISTをご参照ください。
レーザ測量について、数値地形解析について
重要インフラである国道249号線及び輪島港、飯田港を対象に航空レーザ計測を実施しました。現在はデータの解析処理を行っており、自動フィルタリング後の速報データは1月末に完成する予定です。計測したデータでは一部積雪が確認されており、細微な変状は雪に覆われて識別できていない可能性はありますが、崩壊地や斜面に発生したクラックなどが判読できます。
〈計測範囲〉
輪島市と珠洲市を結ぶ国道249号線沿線70km及び輪島港、飯田港近辺(180km2)
〈成果データ仕様〉
オリジナルデータ(計測点密度:10点以上/m²)、グラウンドデータ、グリッドデータ(間隔:0.5m)、等高線データ(主曲線:1m、計曲線:5m)、オルソフォト(解像度:12.5cm)、ELSAマップ(解像度:50cm)
※計測範囲および成果データ仕様等の詳細についてのお問い合わせは、お問い合わせフォーム よりご連絡ください。
索引図のPDFはこちらからご確認ください。
〈データの留意点〉
①地殻変動の影響について
国土地理院による「令和6年能登半島地震に伴う地殻変動(第4報),2024/1/15更新」によると、電子基準点「輪島」で西南西方向に1.2m程度の変動、1.1m程度の隆起が見られるなど、能登半島を中心に広い範囲で地殻変動が観測されています。本計測データは、計測時点での航空機搭載のGNSSセンサーの数値と電子基準点情報(民間有料サービス)でデータ処理を行っています。災害前のデータと重ねた場合、数m単位で位置のズレが生じる可能性がある点にご留意ください。調整点との比較検証は実施していません。
②積雪による影響について
航空レーザ計測は1/11、1/13、1/17に実施しており、航空レーザ計測と同時に撮影した写真では一部積雪が確認されています。航空レーザ計測のレーザ光線は積雪を透過せず上面で反射するため、グラウンドデータ、DEMデータは地盤標高に積雪深を加えた高さとなっている点にご留意ください。積雪の影響度合いについては、オルソフォトで確認いただけます。
〈使用・販売に関する問い合わせ先〉お問い合わせフォームへ
地震発生前後の複数の衛星SAR観測データを用いて干渉性※1の変化を解析し、火災や液状化・地震による倒壊・損壊などの建造物被害が発生した範囲と建造物の被害状況を推定しました。
欧州が運用するSentinel-1と日本が運用するALOS-2(だいち2号)はいずれもSAR衛星ですが、観測に用いるマイクロ波の波長が違うため、被害の見え方が異なります。この特徴を活かし、それぞれの解析結果を組み合わせることで被害状況を区分しました(特許7335733号)。
被害状況推定図では、地震に伴う様々な原因によって地表面の状況が変化し、家屋等の建造物に変状が起こっている可能性のある地域を図示しています。
地表面の状況の変化の要因には、地殻変動や強い揺れによる地盤変位、津波による浸水、斜面からの土砂流入、建造物の変状などが考えられます。
建造物の被害は「津波による流失・倒壊」「火災による焼失」「地震の揺れによる倒壊・屋根瓦の落下」「液状化による傾動(傾き)」等の様々な被害のほか、2時期の使用データの観測期間で発生した増築・改築などの経年変化、地殻変動による地表面の変化などを含んだ情報です。消失や全壊を建造物被害の可能性が「極めて高い」とし、「極めて高い」と比較した相対的な被害可能性の程度を「高」「中」「低」で表現しています。被害認定基準等とかならずしも一致するものではありません。
<使用データ>
Sentinel-1
・2023/12/14~2023/12/26の干渉ペア(南行軌道:地震前)
・2023/12/26~2024/1/7の干渉ペア(南行軌道:地震前後)
ALOS-2(だいち2号)
・2023/9/26~2024/1/1の干渉ペア(北行軌道:地震前後)
・2023/6/6~2024/1/2の干渉ペア(南行軌道:地震前後)
※1:https://www.eorc.jaxa.jp/ALOS-2/img_up/jpal2_howto_insar.htm
衛星観測の2時期の間で地表面の状態がほぼ変化しない場合は干渉性が高く、地形・植生・建物などの変化があった場合は干渉性が低くなります。
※本解析のALOS-2データは、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の「ALOSシリーズ Open and Freeデータ(https://www.eorc.jaxa.jp/ALOS/jp/dataset/alos_open_and_free_j.htm)」よりご提供いただきました。
※判読結果は今後の情報に応じて更新する可能性があります。
地震発生前後の複数の衛星SAR観測データを用いて干渉性※1の変化を解析し、地表(地盤・路面・建物など)の形状が変化し、なんらかの被害が発生している可能性が高い場所の範囲を推定しました。
SNSで液状化被害が投稿されている地点(2024/1/5取得)を重ね合わせました。SNSの位置情報は株式会社Specteeにて分析したものです。
<使用データ>
Sentinel-1
・2023/12/14~2023/12/26の干渉ペア(南行軌道:地震前)
・2023/12/26~2024/1/7の干渉ペア(南行軌道:地震前後)
<解析方法>
①Sentinel-1の地震発生前の2時期のデータを利用して干渉性※1を算出
②Sentinel-1の地震発生前と地震発生後の2時期のデータを利用して干渉性を算出
③建物がある範囲を対象として、①と②の干渉性の変化から地表面が変化したと考えられる範囲を推定
(地震や液状化に伴う建物等の被害による地表面の変化領域と考えられる)
※1:https://www.eorc.jaxa.jp/ALOS-2/img_up/jpal2_howto_insar.htm
衛星観測の2時期の間で地表面の状態がほぼ変化しない場合は干渉性が高く、地形・植生・建物などの変化があった場合は干渉性が低くなります。
※SARについては当社が運営する地理空間情報技術ミュージアムMoGISTをご参照ください。
以下の判読結果は、2024年1月2日に撮影した斜め写真をもとに被災地点の位置及び被災状況を速報としてまとめたものです。
※撮影した写真から確認できる範囲に限定して作成していますので、被災地全域を網羅的に整理したものではありません。
※判読した被災状況は、「建物倒壊」「津波浸水」「斜面崩壊」「盛土崩壊」「構造物変状」等です。
※被災状況の分類は撮影した写真から推定したもので、今回の地震前から存在する変状を含む場合があります。
※判読結果は今後の情報に応じて更新する可能性があります。
撮影した航空写真の一部を以下に掲載しています。すべての写真は「Bois/防災情報提供サービス」無償版サイトでご確認いただけます。
共同撮影:国際航業株式会社・株式会社パスコ
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