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気候変動政策ブログ・環境通信

環境通信 Vol.197 火山灰は産業廃棄物?火山災害を環境の観点でとらえる(『防災✕環境』シリーズ①)

2022/01/01

コラム

火山灰は産業廃棄物?火山災害を環境の観点でとらえる(『防災✕環境』シリーズ①)

防災環境事業部 防災ソリューション部 大津 拓也

1.火山噴火と火山災害

2022年1月15日に発生した南太平洋のトンガ近海の海底火山(Hunga Tonga-Hunga Haʻapai)の噴火では”未知の現象”である潮位変化が観測され、日本でも「津波警報」の仕組みによって警報が発表されました。自然現象の大きさに畏敬の念を抱くとともに、火山防災の必要性を感じる事象であると感じます。

日本は、トンガと同様に変動帯(プレート運動による地殻変動・火山活動が活発なエリア)に位置しており、地球上の1割の火山が集中している火山列島です。
近年でも、御嶽山(2014年)、箱根山(2015年)、阿蘇山(2021年)などで噴火が発生しています。特に2014年の御嶽山噴火では、“突然の噴火”により登山客に被害が出てしまうなど、噴火の予測は依然として難しいものとなっています。

そのような状況のなかでも、2021年3月には富士山ハザードマップの改定が行われました。
民間企業のお客様から国際航業への問い合わせも、富士山のハザードマップ改定後から徐々に増えてきています。水害や地震に比べて対策の優先度が低くなりがちな火山災害については、企業担当者もわからない点が多いのではないでしょうか。

2.火山灰の取り扱い

火山の噴火に伴う被害の一つに「降灰」があります。富士山の噴火では東京都心エリアでも2~10cmの降灰が想定されています(参考:降灰の可能性マップ)。
噴火現象のうち最も遠くまで影響を与える火山灰は「停電」「交通の麻痺」「水質汚染」など生活・業務に深刻なダメージを与える可能性があります。

図 降灰の可能性マップ

出典)静岡県ホームページ,富士山ハザードマップ(改定版)検討委員会報告書(令和3年3月富士山火山防災対策協議会,より引用(https://www.pref.shizuoka.jp/bousai/documents/05-7_syou05-7.pdf)

降り積もった火山灰は除去する必要がありますが、民間事業者はどのように処理すればよいのでしょうか。
環境管理の観点から火山灰を捉えると、以下のように説明がなされています。

◆法令上の火山灰の取り扱い

・「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」では「廃棄物」に該当しない

火山灰は産業活動によって排出されるものではないため、「産業廃棄物」には該当せず、「一般廃棄物」として処理することになりそうです。
これは、各市町村が処分する責任を負うことを指します。しかし、市町村としては、通常の廃棄物の性質・量ではないため「災害廃棄物」として処分することになるでしょう。
よって最終的には、市町村の判断・指示を待つことになるものと推察されます。

BCP(事業継続計画)の観点からは、「降灰→事業所からの排出」までのあいだ、除去した火山灰を一時保管しておくことを考慮した計画が求められます。
その際には以下の点に注意して保管場所を選定するとよいでしょう。

平坦な場所
水路・排水口などから離れた場所
トラックでの進入が可能な場所
飛散防止策(シート)などを設置できる場所

3.火山防災の取り組みにむけて

火山災害は多くの自治体・企業が経験したことの無い事象で、噴火により想定外の事象が多く発生することが予想されます。平時でも準備できるものは、予めBCPに組み込み、噴火時にできるだけ余裕をもった行動ができるよう心がけると良いのではないでしょうか。

最後に、2022年1月27日に、企業の火山防災に必要な情報を整理するウェビナーを開催します。火山ハザードマップの記載内容や、火山噴火に関する警報などの情報を今一度確認したい、という方は是非ご参加ください。

担当は、防災環境事業部 防災ソリューション部 大津拓也でした。