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気候変動政策ブログ・環境通信

環境通信 Vol.188 最新のCDPレポートからみる日本企業の動向

2021/04/01

コラム

最新のCDPレポートからみる日本企業の動向

防災環境事業部フロント営業部 田中 里彩

今月は、CDPが先日発表した2020年度報告書についてです。
気候変動・水セキュリティ・フォレスト・サプライチェーンの4分野における報告書をもとに、日本企業の傾向や今後期待されることについてお伝えします。

【気候変動】
CDPより回答要請を受けた500社のうち、自主回答をした企業も含め、327社(65%)の企業が回答し、世界的にも非常に高い回答率となっています。また、最高位のAにランクされた企業は、昨年の38社と比べ約1.4倍の53社に躍進しており、昨年に増して日本企業のTCFD勧告への対応が進み、開示情報の質が向上していることが一つの影響と考えられています。
2020年から科学的根拠に基づく排出削減目標(SBT)に関する設問で、新たに低炭素エネルギー、再生可能エネルギーの生産または消費に関する目標についての設問が設定されました。日本政府も2050年までにカーボンニュートラルを目指すという野心的な方針を表明したことから、回答結果にも企業が再生可能エネルギーの調達を推進する動きが見られており、組織のスコープ2排出量の削減に大きく寄与する具体的な施策として期待されます。

【水セキュリティ】
世界の淡水需要は将来的に増加の見込みがある中、気候変動による干ばつや記録的な豪雨・洪水はいままでになく頻発しており、機関投資家は企業の水リスクの潜在的な財務インパクトに対し、非常に関心を強めています。
2020年のCDP水セキュリティに回答した日本企業は、333社のうち203社(61%)で、回答率は前年と変わっていませんが、Aランクの企業が30社となり、これは世界的に見るとトップで水リスクの認識や水に対する管理の水準が高いことが明らかです。
一方、業種による情報開示の温度差は変わらず、一般的に水リスクが高いと考えられている「素材」、「食品・飲料・農業関連」、「発電」、「化石燃料」の4セクターの中で、「素材」と「化石燃料」の回答率がそれぞれ80%、75%と高いのに対し、「食品・飲料・農業関連」は66%と平均程度、「発電」の回答率は30%と大きく平均回答率を下回っています。
これらの業種の水リスクに対する投資家の情報ニーズは他の業種と比べて大きいことから、今後関連する情報を開示することが期待されます。
また、水リスク評価を行う企業数は増えているものの、評価方法の成熟度には企業間で大きな開きがあると指摘されており、水リスク評価の深化が求められます。

【フォレスト】
CDPフォレスト質問書への日本企業の回答率は27%(47社/176社)と、【気候変動】(65%)や【水セキュリティ】(61%)と比較しても低い数値となっています。
回答結果による本年のポイントとして、サプライヤーとの協働が挙げられています。「持続可能な原材料の供給能力を向上し、改善するための協働」について、一次サプライヤーと協働しているとした企業は73%、二次以上のサプライヤーと協働している企業が66%で、特に後者が昨年比+14%と向上しています。このように一次・二次サプライヤーと協働し、持続可能な原材料の供給や森林減少といった課題に取組むことで、ブランドの価値向上に結び付けている企業もあります。
森林減少による動物の生息地破壊が、ウイルスを運ぶ動物と人間の接触を増加させ、感染のリスクを高めると言われていることから、その意味でも森林課題を自社のマテリアリティと認識し、事業へのリスクと機会を開示する企業が増えることが望まれています。

【サプライチェーン】
サプライヤーについても、気候変動・フォレスト・水セキュリティに関する質問書への回答が要請されましたが、その中で気候変動に関する情報を提供したサプライヤーが最も多く、約8000社(52%)からの回答となりました。フォレストと水セキュリティは回答を要請される企業数自体が少なく、約2500社(57%)と約450社(59%)からの回答となっています。
今後は、自社の操業による環境影響の管理だけでは十分ではなく、サプライチェーンを通じた環境リスクの管理・削減に努める先進企業が、より競争力・レジリエンスを維持するものと考えられています。

◆各分野のCDPレポートはこちら
CDPジャパン https://japan.cdp.net

当社においても、気候変動(TCFD,SBT,CDP)や水リスク(評価,CDP-水セキュリティ)、森林保全(CO2吸収量評価,CDP-forest)等への対応に関するご相談に対応しております。
対応にお悩みの際は、是非ご相談ください。

担当は、防災環境事業部 フロント営業部 田中里彩 でした。