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気候変動政策ブログ・環境通信

環境通信 Vol.178 最新CDP質問書 回答結果からみる日本企業の傾向

2020/06/01

コラム

最新CDP質問書 回答結果からみる日本企業の傾向

防災環境事業部フロント営業部 田中 里彩

4,5月と休載させて頂きました本通信ですが、今月から再開させて頂きます。
今月は、CDPが先日発表した2019年度報告書についてです。気候変動・水セキュリティ・フォレスト・サプライチェーンの4分野における報告書をもとに、日本企業の傾向や今後期待されることついてお伝えします。

【気候変動】

CDPがアンケートを送付した日本企業500社のうち316社(63%)が回答し、日本での調査開始以来、回答率が初めて60%を超えました。
Aリスト入りした企業は38社と、昨年より18社増加(1.9倍)、国別で世界一位と躍進しました。CDPの質問書では、2018年よりTCFDの勧告内容が反映されていますが、日本国内のTCFD賛同企業(機関)が2020年5月末時点で271社になるなど、ここ数年で大幅に増加していることとも関係がありそうです。
CDPの質問書では、2018年よりTCFDの勧告内容が反映されていますが、日本国内のTCFD賛同企業(機関)が2020年5月末時点で271社になるなど、ここ数年で大幅に増加していることとも関係がありそうです。
今後も、「リスクと機会」による影響や、「シナリオ分析」を踏まえた気候変動に関する課題解決および積極的な情報開示が期待されています。

【水セキュリティ】

気候変動により干ばつや洪水なども増加傾向にあり、「水」が企業の財務に与える影響に対する機関投資家の関心が高まっています。
2019年のCDP水セキュリティ質問書に回答した日本企業は、320社のうち194社(61%)で、前回の60%からほぼ変わっていません。
一般的に水リスクが高いと考えられている「素材」、「食品・飲料・農業関連」、「発電」、「化石燃料」の4セクターの中で、「素材」と「化石燃料」の回答率がそれぞれ71%、80%と高いのに対し、「食品・飲料・農業関連」は60%と平均程度、「発電」の回答率は20%と大きく平均回答率を下回っています。
これらの業種の水リスクに対する投資家の情報ニーズは他の業種と比べて大きいと考えられることから、今後関連する情報を開示することが期待されています。
また、水リスク評価を行う企業数は増えているものの、評価方法の成熟度には企業間で大きな開きがあると指摘し、水リスク評価の深化が求められています。

【フォレスト】

CDPフォレスト質問書への日本企業の回答は42社/152社(28%)と、【気候変動】や【水セキュリティ】に比べ、回答率の低さが顕著です。
回答率が最も高いのは製造業(36%)、ホスピタリティ、サービス(ともに33%)、インフラ関連(31%)がそれに続いています。
その中には一次・二次サプライヤーと積極的に協働し、持続可能な原材料の供給・森林減少といった課題に取組むことで、ブランドの価値向上に結び付けている企業もあります。
2019年はブラジルやオーストラリアで森林火災が相次ぎ、森林のもつ生物多様性機能にも注目が集まりました。また、森林伐採や火災等による森林減少により、動物と人との接触機会が増えることで感染症を引き起こしやすくする可能性が指摘されており、今後ますます注目度は高まりそうです。
企業活動が生物多様性に与える影響の定量化が難しく、評価指標も定まっていない部分があるとはいえ、投資家も長期的な取組課題として認識しています。

【サプライチェーン】

サプライチェーンからの温室効果ガス排出量は、平均で直接的な排出量の5倍以上となっていることから、サプライヤーと協働し環境課題に取り組むことは大きな排出削減の達成につながります。
2019年度はサプライヤー全体で5億6,300万tのCO2排出削減が報告され、開示に応じた企業数も世界で約7,000社と前年と比べ1.25倍となりました。
世界の大手購買企業125社のうち、ほとんどすべて(95%)が環境問題に先駆的なサプライヤーは競争力があると述べており、残りの5%だけがそのようなサプライヤーはコストが高いと評価しています。
一方で、71%ものサプライヤー企業は未回答に止まっており、購買企業はサプライヤーにアクションを促し始めています。

CDPジャパン

経済産業省TCFD

当社においても、気候変動(TCFD,CDP)や水リスク(評価,CDP-水セキュリティ)、森林保全(CO2吸収量評価,CDP-forest)等のご相談に対応しております。対応にお悩みの際は、是非ご相談ください。

担当は、防災環境事業部 フロント営業部の田中里彩でした。