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気候変動政策ブログ・環境通信

環境通信 Vol.150 【WET】続報 環境省における検討状況

2017/12/01

コラム

【WET】続報 環境省における検討状況

技術サービス本部 法人営業部 第三営業グループ 黒田康平

WET【Whole Effluent Toxicity】について、本メルマガで取り上げるのは昨年8月以来となります。

おさらいですが、WETとはミジンコ、メダカ、ミカヅキモ等の淡水生物を用いて排水の水質を評価する手法です。法規制に向けて、環境省により8年程前から検討が行われており、当初は2016年度以降に法規制を導入する予定でしたが、今年度も引き続き検討が行われております。

WET手法のご紹介はこちら

今月12月7日(木)、今年度1回目の検討会「生物を用いた水環境の評価・管理手法に関する検討会」が開催されました。本検討会では主に以下の3点について報告・議論がなされました。
① パイロット事業に関する昨年度の結果と今年度の予定
② 新たに設置されたワーキンググループにおける検討状況
③ 今後のスケジュール

以下に、それぞれの概要を記します。
① パイロット事業に関する昨年度の結果と今年度の予定
※パイロット事業:本検討に協力する企業を募りWET試験を実施しているもの。
昨年度のパイロット事業には14事業場が参加し、工場排水の試験が行われました。
試験の結果、10の事業場で何らかの生物への影響が確認されました。
今年度は、継続試験を希望した9事業場を対象に、試験結果の季節的な変動や、毒性低減のための処理方法の検討、毒性原因の究明等を行う予定をしております。

② 新たに設置されたワーキンググループにおける検討状況
本手法に係る技術的・専門的議論を集中的に行う場として、「生物応答試験法等検討ワーキンググループ」が設置され、6月〜11月末までの間に6回開催されております。検討の概要は以下の通りです。
生物応答試験を用いることで、排水中の多種多様な物質に由来する水生生物への影響を検出できる点は意義があるが、「化学物質管理」「放流先の水生生物保全」の観点からの取組メリットについて明確化出来るよう、検討が必要。
水生生物保全に着目した水質環境基準が、慢性毒性を考慮して目標値を設定されていることを踏まえ、本手法の活用においても慢性毒性を優先して考慮する。
※急性毒性試験:主に試験生物の生死等への影響を評価
※慢性毒性試験:成長・繁殖といった個体群維持のための指標への影響を評価
本試験法は、国内で試験精度を行政レベルで検証した唯⼀の生物応答試験法であるが、影響度合いを算出する場合、1濃度区間(排水希釈濃度にして2倍)以内のばらつきを伴うなど、試験精度に対する考慮が必要。

③ 今後のスケジュール
今年度は①に記載のパイロット事業を継続実施し、3月に再度検討会を開催
来年度に、「排水改善ガイドライン(仮称)」の作成やこれを用いた関係者の理解促進方策を検
来年度末に検討会の中間とりまとめ

その他、検討会委員の方からは、この1年の間にSDGsやESG投資、生物多様性等に関する社会的な関心が非常に高まっていることから、技術的な課題はあるものの、ガイドラインの作成や取組むメリットを提⽰し、企業の自主的な取組を促進していくべきだろう、といった話が出ていました。

当社においても、生物多様性調査や水リスク対応に関するご相談が増えており、社会的な関心の高さを感じております。来年度、「排水改善ガイドライン(仮称)」が出されると、またWETについても取組が増えてくるかもしれません。

担当は、首都圏事業部法人第三営業グループ 黒田康平でした。